『ちょっとっ勝手に見ないでって言ってるでしょ?!』
バッ!と英語のノートを奪うと夕陽は言った。
『ちょっとくらい見せろよっとに可愛くない』
大斗は言い返す。
最高に可愛くない顔で夕陽は彼を睨む。
外は暗い雨模様。
この2人が作る空気も今日の天気のようだ。
体育祭が終わり季節はすっかり梅雨。
相変わらず2人はこんな感じでジメジメだ。
『神崎君、これ…見る?』
クラスメイトが2人を見かねて言ってくれるが、
『ありがとう♪でも大丈夫、迷惑かけられないからね。』
こいつ…営業スマイルじゃないか…
大斗はやんわり断ってしまうのだ。
『あんたはあたしへの迷惑はどうしてくれるのかしら?』
つい言わなくてもいいのに気付くと絡みに行ってしまう夕陽。
『迷惑はどっちかねぇー?参った参った』
嫌味っぽく、はぁあっとする。
大斗も夕陽の前だと素になってしまう事に本人はまだ気付いていない。
ここは教室なのに、みんなの前で悪態つく大斗。
少し前だったら人前でここまでしなかっただろう。
何だかんだ言ってうまくバランスがとれていたのではないだろうか、この2人。
そんなこんなで、期末テストの結果は散々だった。
普段、夕陽と大斗は苦手なものを写し合って越えてきたが、今回はお互いこの調子だ。
結果、2人とも素直に他の人に頼めず意地を張った為、テストは撃沈。
夏休みの最初の2週間は補習で学校に来る羽目になった。
『先輩…あたし情けないことに補習なんです…』
『俺も受験対策の授業で毎日学校に来るから』
先輩は神崎君と違って優しい…
優しいと、思う…
夕陽は先輩とは、それなりに順調である。浮き沈みも波もなくとりあえずは。
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『がんばってねぇひーちゃん…夏休み遊ぼうね!!』
南深達が励ましてくれる。
『どうしてできなかったの数学だけなのに…5教科やらなきゃいけないの…』
『どうして休みの日までお前の顔を見なきゃいけないんだ…』