『たまには人を殴りたいの♪』

何て言う神崎君が、どさくさ紛れに好き放題人身被害を与えてるなんて、誰が気付くのかしら?

いっそのこと正体をバラしてしまおうか?


『おまえっそんな事したら、屋上から逆さ吊りにしてやるからな♪』


今の勢いじゃ、本気でやりかねない…っ


うっかりみんなに注目されて上機嫌の殿は言った。

『神崎君の自分勝手にはほんと感心するよ』

『それって誉め言葉?』

夕陽は絶句。

最近の大斗は益々絶好調だった。


絶好調の彼は、今日も活き活きと練習に励む。

そんな大斗は棒倒しで思いっきり立川先輩を踏みつけていた。


絶対わざとだ…


周りの歓声に反して夕陽のイライラは高まっていくばかり。



『だから俺は、あいつがお前と付き合う前から好きじゃない。これでもお前の手前、大分我慢してるんだ』


言ってる事がメチャクチャではないか?


『はぁ〜?!先輩が神崎君に何したって言うの?』

『嫌なもんは嫌なんだからしょうがねぇだろが!!』


メチャクチャだ…

何様発言?!


『神崎君って何様なわけ?』

『俺様♪』

ガハハーッと吹き出す大斗。


あったまくるっ!!


『もういい!!帰るっ!!』


夕陽は鞄を掴むと勢いよく教室から出ていった。


なによっ「思うようにしろ」って言ったのは神崎君じゃない?

付き合い促したのは神崎君じゃない?



―――――――――


それからはー

『通れない。邪魔だ!!』

『こっちのセリフよ?!通路は他にもあるわっ』

『黙れブス』

『うるさいっ詐欺師!!』

2人は口を開けばこんな喧嘩ばかり。


クラスのみんなも既に毎度の事になっていて「またか」と最早飽きれ顔。



体育祭当日。

夕陽達のチームは見事に優勝。もちろん大斗や恭次の大暴れ効果だった。

そして打ち上げに行くが直ぐに大斗は帰ってしまった。


赤い車が迎えに来ていた―