『立川先輩とは順調?チーム別れちゃったね』

杏が夕陽をからかう。

『順調と言えば順調かなぁ…?』

なんとなく曖昧に答えた。

『ひーちゃんって恋愛になんか冷静だよね?』

南深が不思議そうに言った。

先輩とは付き合っていて嫌な事は特にないが、未だに夕陽の気持ちは追い付いていかない。


先輩があたしを本当に好きかも微妙だし…

冷静か…あーぁ…

本来は冷静になんていられないよ。

あたしはそういう人だって自分で良く分かっている。

でも…言えない。

「そんなに好きじゃないから平気」って、こんな最低な考えを暴露する勇気はないよ…。



体育祭で1、2年生は先輩達について行く形のはず…なのだが…

『きょうちゃん♪学校が公に認める暴れて良い時だ!!』

方向性が間違ってる少年が一人、闘志をみなぎらせていた。

夕陽は、てっきり「めんどくさい」と体育祭なんてサボるだろうと思っていたが…

大斗はやる気満々だった。

練習があるので、朝からしっかり学校に来る。

大斗が3連続で朝から教室に居るのは奇跡だった。



『ストレス発散!お祭りばんざーい!』

恭次もノリノリだ。

先輩を立てなくてはいけない暗黙のルールをまるで無視した2人は大暴れ。

騎馬戦なんて見れたもんではない。

相手チームの騎馬は大斗が乗った先頭恭次の騎馬に次々と倒されていくのだ。


足も早い。

確かに上手い。

先輩だろうが誰だろうがお構い無し。

様々な競技の結果は良好だった。

夕陽は2人の派手さに呆気にとられた。


『いやぁー気分が良いねぇ』

そして暴れて発散した大斗は練習が終ると、口笛を吹きながら教室から消える…。

これから一眠りということらしい…。


自由だ…


そして、2人が暴れ回る姿は良く目立ち、女の子達の注目はまた上がっているようだった。


かっこつけたい為でなく喧嘩の代わりのストレス発散で、当たり散らしてるなんて、あたししか知らないわよね…。


ハプニングに見せかけ余計な手をだしているなんて…


かっこつける為にやってくれたほうが、よっぽど平和よ…。