『難しいのは神崎君と咲さんの関係もだよ』
つい思ったことが口に出ていた夕陽。
会話がバラバラな2人。
『オレ、聞きたいことあんだけど』
ふと大斗は夕陽の顔を見る。
2人の間を風が通り抜けていく。
えっ?なに?
『お前さ、あの時自分家見上げて、何考えてたの?』
えっ?ちょっと話が飛躍しすぎ…
あの時って、送ってくれた時の事だよね?
大斗が夕陽にしたい質問なんて他にも沢山あるはずなのに何で家の事を聞くのか?
何て返そうか詰まって大斗を見る。
『神崎君は勝手だよ。』
夕陽は立ち上がって隣の石の上に飛び乗り背を向けて言った。
夕方に近づいて少し静まった中に小川のせせらぎが聞こえる。
メチャクチャな会話だけど、どうしてこんなになんだか気分がいいのかな。
変なの…
神崎君には何を言ってもやっても平気な気がした。
きっとどんな事でも「そっか」って興味があるのか無いのかわかんないみたいに答えるだろうから。
気が楽…
『あたしんち家、おっきいでしょ?お金持ち。家は大きくなったけど、仕事忙しくなって、両親とも中学途中からあんまり家に帰ってこなくなったの。高校上がる直前にイギリス行きが決まって、親は仕事場に入り浸りになるのも決まった。』
霞がかった空を見上げる。
『あたしは知らない土地にまた独りでいられなかった。だったら日本の少しでも思い出があるこの家に居たかったの。でも独りで居たくないから夜出掛けちゃうし、帰りたくないと思う。矛盾してるけど…でも日本を選んだの』
夕陽は一気に言った。
『そっか。』
大斗はそう一言。
夕陽は小さく笑って、小さく頷く。
『神崎君が言ったみたいに、好きじゃない人と付き合ってもって思う時もあるよ。でも嫌いじゃない…独りで居るより、ずっといいの…』
こんなに話してしまうのはきっと…
このサラサラと響く小川の音のせい…?
髪の毛が風に靡く
大斗の綺麗な顔が夕陽を見る。
『だからオレと咲は一緒にいる。きっと誰でもそうだよ、形は色々でも』
神崎君は静かに微笑んだいた。