夕陽の泣き腫らした顔が痛々しかった。
『家出…の方が、ましかな…前なら何かあっても無くても人に当たって関係無い人ボッコボコ…』
『でも…部屋は、酷いよ…』
『部屋ならまだいいよ。中2の夏過ぎ辺りからだったかなぁ?人に当たらなくなってからはこうなるパターン。大斗なりの自制なんだと思うけど…』
恭次は苦笑い。
『スイートブルーは店休だし…パチンコ屋とか…大斗の行きそうな所行ったけど、居なくて…』
『パチンコ屋って、どこのオジサンよ、全く…きっと大斗は今頃、綺麗なお姉さんの所とかに居るよ…』
そんな事を言う夕陽に見兼ねた恭次は、ゆっくり口を開く…
そして、お弁当箱を見ながら静かに言った。
『ひぃちゃん…大斗はひぃちゃんの事好きなんだよ…』
そして彼女をじっと見る。
夕陽は首を振る。
『違うよ…恭次くん。大斗の中で咲さんほどの女の子は居ないもの…』
と微笑むその顔は、とても力無く、笑顔とはほど遠い…
『あたしは咲さんの代わりだよ…』
『ひぃちゃん…『恭次くんは絶対違うって言える?もし、咲さんがN.Yに行かなくて、光輝さんの所に行かなくて、ここに居ても、大斗はあたしを見ると思う…?』
夕陽は恭次の言いかけた言葉を遮り再び首を振る。
『あたしじゃ駄目なんだよ…』
泣き出しそうな顔で続ける。
『大斗が今回みたいになった時、咲さんが居たから大斗は持ち直したんでしょ?』
『それは…そうだけど…』
『あたし…ここ片付けるから…恭次くんは学校行って…』
恭次は少し間を開けてから…
『わかった…。でも1つだけ…』
と小さく問いかける。
『あ…う、ん…?』
『ひぃちゃんは大斗の家の話し知ってるでしょ?誰から…聞いたの?』
『え…?大斗、から…だけど…?』
『そっか。あのね…俺は大斗の過去の事は、咲ちゃんとかマスターに聞いたんだ。あと、雪那さん。』