――――――
『あ♪お兄さん?』
とある道の片隅で大斗は声をかけられた。
『なに?』
ただ一言、答える。
『ねぇ?何してるの?暇なら少し遊ばない?』
逆ナンされるなんて、しょちゅうのこと。
『いーよ。ホテル代出してくれる?』
普段から大概彼は笑顔でこう答える。
しかし今のその笑顔は、最近見せる柔らかい表情などではなかった。
笑い返した女は大斗の腕を取って歩き出す。
――――――
次の日、夕陽は学校を休んだ。
結局そのまま2日が過ぎてしまった…。
その間ずっと眠り続けていた。
学校から連絡ないから…大斗の事…しげさんが上手くやってくれたのかな…
朦朧としながらろくに食事もせずベッドに転がっていた
はぁ…
携帯は無い。
でも誰かと連絡を取る気にはまだなれなかった。
何にも考えたくない…
なのに大斗の事ばかり浮かんでくる…
もうやだ…
寝転ぶ夕陽の瞳に映るもの。
咲さんが…大斗の誕生日にくれた、ぬいぐるみ…
大斗と2つセットなんだよね…
枕元に並べられたそれを抱き締めた…
大斗に会いたい…
――――
―――
――
―♪―♪―♪―
3日目の朝、家の電話が鳴る。
《只今留守にしています…》
〈ひぃちゃん?ひぃちゃん?居ない?!〉
恭次くん…
ゆっくり受話器を取る。
「はい…」
〈あぁ良かった。携帯繋がらないから…家に居たんだね〉
「ごめん…」
〈大丈夫?ひぃちゃんの連絡待ってようと思ったけど…電話しちゃった。〉
「ごめん…」
〈今から大斗の家に来れる?〉
「大斗…どうかしたの…?」
〈とにかく来てくれたらわかるから…〉
――――――
そして今に至る…
鍵の開けっぱなしにされた大斗の部屋の中。
『恭次くん…ごめんね』
『大斗と夕陽ちゃんに何があったかわからないけど…いいんだ、大斗の大暴れに関しては慣れっこ。』