『落とす…って…なにそれ…。いつも…ふざけてんのわかっていたけど…でも…やっぱり…大斗は結局他の周りの女の子とあたしの事は一緒なんだね…?』

『バカな事言うなよ!!一緒なんていつ言ったんだよ?!違うだろ!?』

『何よ?!何が違うの?!大斗なんてあたしの事、冷蔵庫とか空気とかって言うじゃない?!女の子に言う言葉じゃないよ!!大斗にとったら女の子は咲さんだけなんでしょ?』

夕陽は泣きながら一気に捲し立てる。


『ふざけんな!!いい加減にしろよ!!まだ咲の事言うのかよ?!!』


ダンッ!!


夕陽が押さえつけられたのは…


あの桜の木…

その下…


『ふざけんなよ。』

木に手を突いた大斗は小さく呟く。


そして次に大声を出した。

『お前は何にもわかってない!!今のご時世、冷蔵庫が無かったらビールは冷やせねぇんだ!!』


触れてる所から…

伝わる、震えは…

あたしの…?

それとも…大斗?


『世の中空気が無かったら息も出来ないのわかんなねぇのかよ?!!』


大斗は、そう言いながら悲しそうな顔をしていた…


何…言ってるの…?


〜♪〜♪〜♪〜


その時、大斗の携帯が鳴った。


―着信。恭次―


大斗は画面を確認すると


ポキッ。


と折って、そのまま後ろに放り投げた。

見事に池に落ちてしまった。


〜♪〜♪〜♪〜


間髪入れずに今度は夕陽の携帯が鳴り響く。

『誰?』

『え?あ…』

夕陽は慌ててポケットから携帯を取り出す。


―着信。恭次くん―


『恭次…くん―あっ…っ!!』

大斗は携帯を取り上げると、そのまま後ろにまた投げる。

『んな!!何すんのよ?!』


ポチャン。


夕陽の携帯も池へ落としてしまう。


大斗は夕陽を見据えて言った。

『電話なんて意味無い。そんな機械越しに俺はお前の声なんて聞きたくない』


『大斗…言ってる事…さっきからわかんないよ…ムチャクチャ…だよ』

涙を流す隙もない。

さっきの溜まっていた涙を散らしながら夕陽は言った。

ハラハラと桜の葉が落ちてきた。