そうして、その朝、大斗を残してマスターは北海道に行ってしまった。

『まぁ2週間だし悲しむなよ♪』

『悲しまねぇよ』


7月。

夏休み目前。

大斗はマスターが言った事がいまいちわからないまま見送りをした。


悲しまねぇけど…

突発すぎるぞ、じじぃ…

なんだよ?謎ばかり残しやがって…

「向き合う」って夕陽にって事…か?

わかんねぇ。

こんなに悶々としたことなんてないんだ。

夕陽に会ってもきっとあいつは何も言わない。

少し前なら、何があったか検討ついたのに…

気付いたら、何にもわかんなくなってる…


咲が…

咲がわかんなくなった時と一緒だ。

何考えてんだよ…お前。


ボケーとしながら学校に向かう。

ダラダラしていて2時間目が終わる頃に到着。

『おっそーい!!大斗ちゃん遅刻ぅ♪』

今日もテンションの高い恭次は大斗を見つけるとやって来た。

『最近、教室に居ないものの、朝から学校来るのにね?』

『うるせぇ』

『で?で?昨日はひぃちゃんと「約束」どうだったのさ?』


何も知らない恭次は見るからにワクワクしながら問いかける。

大斗は無言で睨み付ける。

『はい?』

すぐに気付く恭次。

『また、何かあったわけ…?』

急に落ち着き問い直す。

『ほっとけ』

大斗は何も言わずに機嫌悪く返すと机に突っ伏した。


――――――


『夕陽ちゃん?♪』

『大沢…君?』

今日も夕陽の所にやって来た傑。

昨日、振りきってきてしまったので、少し気まずく返事をした。

夕陽は何とか登校していた。

『今日は夕陽ちゃんに用ってわけじゃないんだけどさ。昼、今日も神崎と会うんでしょ?』

『あ…うん』


お弁当渡す時に話ししよう…

約束破ったことも、ちゃんと謝んなきゃ。


『そうだよね?んで、伝言あるんだよ、神崎から』

『え?大斗が?』

『そ、なんか良く分かんないけど、昼は音楽室来てって』

『音楽室?』

何でだろう?と少し不思議そうに夕陽は答える。