『お前は本当に生意気だ。夕陽はお前のものじゃないのに偉そうな事言うね?』
拓巳は笑いながら大斗に言った。
『うるせぇ』
『拓巳くんは、大斗が夕陽ちゃんを好きなの知っていたのかい?』
『まぁね、それはもう去年の秋の話ですよ。学校で夕陽に再会した時から、そんな気がしていました』
『んなことねぇし』
『はいはい。素直になりなさい』
拓巳は更に笑う。
『で?何があったんだ?』
とマスター。
しばらくマスターの顔を見て大斗は口を開いた。
『夕陽がわからねぇ…』
その呟きにグラスを拭きながらマスターは笑っている。
『なんだよ?くそじじい何でもわかってるように見るなよ?!』
『わかってないって、八つ当たりするなって』
大斗は刃向かいながらも視線を外した。
『だって…あいつは…お前に泣くときの顔で…俺には泣かねぇ…』
大斗は独り言のように拓巳へ向き変えて小さく呟いた。
柄にもない大斗の弱音だった。
『はぁ?何言ってんの?お前。ださっ。夕陽の気持ちを泣き顔で判断されたら気分悪い。お前はあいつの何を見てるんだよ?』
拓巳は少し強い言葉で言った。
何って…
あいつがどれだけお前を好きだか見てきてるんだ…
『言っとくけど、夕陽はとっくにもう俺の事を見てないからな。んなこと言わせんなガキ』
『…』
何で考えてる事わかるんだよ…
『大斗?』
『あぁ?!』
イラつきながら答える。
マスターは大斗を見据えた。
『俺、雪那に会いに行くよ』
そして大斗の瞳を射抜く。
『はい?』
「何を突然?」大斗は思わず間抜けな声が出た。
『雪那って言うのはね、咲も良く知っている僕の古い友人だよ。まぁ本当は友人っていうか、彼女?元カノ?』
マスターは拓巳に説明する。
『じじぃが彼女とか言うと気持ち悪りぃよ―イッテぇな!!』