『う…ん…』
『あたしは、嬉しかったんだよ。ひぃちゃんはあんまり自分の事溜め込んで中々話してくれないから…。だから、あたしが居るから、南深もいる。頑張ろう。ね?』
杏は諭すように優しく話しかける。
瞳を閉じた…
杏の言葉が…
染みてきた…
あたしは、独りじゃ、やっぱり何にもできない…
相変わらず駄目なまんま…
でも、だから…
話してよかったと…思う…
『ごめんね…。うん…ありがとう…』
――――――
『シケた顔してるねぇ?今日は何があったんだ?』
スイートブルーにて、明らかにブスッ垂れた大斗を見てマスターは言った。
『てゆーか、何でお前がいるんだよ…?』
『酷いなぁ神崎大斗くん♪しかもね、俺先生よ。口の聞き方を弁えなさい』
とにっこり。
『知らねぇし。へたれ大学生が』
スイートブルーに来ていたのは拓巳である。
『こら大斗!大事なお客様に何て事を言うんだよ?』
マスターの突っ込みに
『小田切なんか客じゃねぇよ。』
と大斗は荒々しく言う。
『やけに絡むなぁ?何だ?何だぁ?』
マスターは楽しそう。
『フンッ。今宇宙で一番見たくない奴が目の前に居るんだからしょうがねぇだろ?』
更にぶすったれる大斗。
『ひどい言い方だな♪』
面白がって拓巳は答える。
『どうせ愛しの可愛い夕陽ちゃんとなんかあったんだろ?』
『うるせぇよ』
大斗はマスターの話に噛みついた。
『まだどうにもなってないのか?俺が身を引いた意味が無いな』
サラリと拓巳は言った。
『何だよソレ?小田切は何だかんだ結依さんとうまくやってんじゃねぇかよ?身を引いた?偉そうに。ふざけんな』
イライラしながら切り返す。
『わかってないねぇお前は。俺がどれだけ夕陽の事を特別だと思ってるか。あいつには幸せで居て欲しい、形は何でもいいんだ』
『そんなの分かりたくもないね、自分で幸せにする気ねぇのに。それに夕陽の事を呼び捨て止めろ』