『大斗?!』

丁度階段を上がりかける彼の背中が見えた。

大斗は止まり振り返る。


げっ!?

機嫌悪っ!!


夕陽はパタパタ彼に近寄る。

彼女が追い付くと大斗は口を開いた。

『アイツ、誰だよ?』

『し、知らないしっ!て大斗のクラスメイトじゃない?!』

『知らねぇ』


もうっ相変わらずっ…


『お前…』

『はい…。』

思わず敬語。

『お前さぁ…初対面のヤツに簡単に名前で呼ばせんなよ?』


っと言われましても…


『ひろと…?』

『あぁ?!』


だから機嫌悪すぎだからねっ!!


夕陽はそんな大斗をじっと見つめる。

そして小さく話し出す。


『でも…あたしを呼び捨てするの…学校に大斗しかいないもん…。てゆうか…さっき気付いたけど…世の中に大斗を入れて2人しかいないもん…』

と言って視線を外す…

『あそ』

大斗は一言言うとクルッと夕陽に背を向け階段を上がっていった。

『ひ、ろ…』

その背中を見ながら戸惑い動けない夕陽を

『早く来いよ』

大斗は振り向かずに呼んだ。


ガチャ



『あっうん…』

慌てて後に続いた。


『お♪お2人お揃いで』

明るく出迎える恭次。

『てゆーか、大斗どしたの?そのキモチワルイ顔…ってか笑い?』

きょとん。と恭次は大斗を見て言った。


『うるせぇっ』

と大斗は奥に行ってしまう。

『笑い?』

『え?なんか嬉しそうな顔してたけど?』

『イヤイヤ。あの人非常に機嫌悪かったよ?ドア開けるまで…』

「何言ってんのよ恭次くん?そんなわけないしっ」と言う夕陽の声と

「ひぃちゃんと何かあったな♪わかりやす」と言う恭次の呟き

それは被ってお互いが言ったことは各々聞こえなかった。

恭次はクックッと笑っている。

そして、

『おい!!大斗ぉー早く帰ってこいよぉー!!』

と笑顔で端に後ろ向きで突っ立つ大斗に声をかける。


『学校…俺だけ…』


大斗は2人には聞こえない声で呟き深呼吸

そして煙草を吸いながらなにくわぬいつもの顔で戻ってきた。