『ねぇ?どうしちゃったのよ?そんなの大斗君じゃない!!』
『…』
思わず音がしたほうを見ると、頭から飲み物を被って水を滴ったらせている大斗の姿。
『…でも、無理だから』
無表情、トーンの低い声で彼は言う。
何事?!
さっきまでの営業スマイルはどこに置いてきたのよ…?
唖然と見ていると女の人は勢いよく店から出て行ってしまった。
『しゅ修羅場…?!』
夕陽は呆気にとられて呟いた。
マスターはそれを見て
『おい、大斗来い』
大斗をこちらへ呼ぶ。
舌打ちした彼はバツが悪そうにマスターの元へやってきた。
『…』
何も言わない彼。
それはまれに見せる大斗の無表情。
酷く冷たい顔だった。
マスターもそれに負けない顔をしている。
『俺はお前に何をしても店の中には持ち込むなと言ってあるはずだ。自分で手を出した事は最後まで責任持てよ』
夕陽には聞いたことの無いマスターの怒った声。
『…』
『返事』
ガンッ!!
と大斗に蹴りを入れる
『…イッテェ』
不貞腐れた顔で大斗は小く言った。
『で、お前は何で揉めたんだ?』
『…』
『もう一度蹴られるか!ガキ』
マスターはいつもからは考えられない声で話す。
『もう…遊ばないって言った。もう…やらないって…』
『はぁ。。。お前がどういう考えかなんて俺は知ったこっちゃない、ただ揉め事は店の外でしろよ?他の目もあるだろ。女に手を出したらややこしい事は付き物だ。いつも言ってる。』
『あー…』
『それにな、お前から仕掛けたものじゃなくてもやった事は同じだろ。いきなり絶縁される身にもなれ。ちゃんと段階を踏めって教えたろ?そもそもお前ならいつも上手くやるだろうが?なんだそれ?』
も、もの凄い…か、会話…
『悪い…』
マスターはため息吐くと席を外した。
『大斗…?』
夕陽が静かに彼を呼ぶ。
『何?』
無表情で大斗は答える。
この人…八つ当たりですか…?
全く…世話がやけるんだから…