咲さん…

あたしは…

あなたみたいにはなれません…



虚ろ…虚ろする意識の中で…

涙を堪える自分が居た。



―――――
――――
――


…っ


「ゅ…ぅひ?…―オィッ!!」
遠い夢の中で…一番聞きたくない声が聞こえる…


お願い…入って来ないで…


これは…気のせいだ。

幻聴。


夢。


一番聞きたくない声が…



本当は…だって、あたしが一番聞き…

『おい!!夕陽!!』



やっぱり…


瞳を開けたら大斗はそこに居た。


『具合、わりぃのかよ?』


もっと、意地悪な態度を取って欲しい。

生意気な言葉を言って欲しい。


あたしの中に…


入って来ないで…



カーテンの隙間から射し込む光が…

邪魔。


大斗の顔を淡く映し出すから。



ザワザワ心に抜ける風が物凄く
邪魔。


見ないように被せている覆いを簡単に取っ払ってしまいそうだから…



大斗の心配そうにする顔が…

物凄く…邪魔


瞳の前が、揺れる…




大斗が居る。

やっぱり夢かなあ…?

夢にしよう。


夢であって欲しいと切に思う…


『じ、時差ボケ。。。っぽい…?』


頭が朦朧とする余り、かなり間抜けに言ったことだろう。

だから大斗には本当に時差ボケだと思ってもらえたかな。

いや、本当に時差ボケなんだから。


そうだよ…だから

別にショックを受けたわけじゃない…

だから寝込んだわけじゃない…


少し迷う自分自身にも、時差ボケだと言い聞かす。


『恭次ん所に佐々原さんから夕陽が帰ってこないってメールきて、鞄あるから学校だろうって…探した。』


『…うん』

『お前…本当に眠いだけか?』

大斗は続ける。


『何て顔してんだよ?お前は保健室何て来たことないだろ?』


「何て顔」してますか…?

って…どんな顔?


まさか「あんたのせいだ」と言えるわけない。

そもそも大斗のせいなんかじゃない。

心配してる大斗の顔に思わず泣きそうになった。