なのに…


何でかお前は居てくれる


どうして…いつも…


そうでいてくれるのか…?

知りたいけど、聞けない。


今…こうして居られたら、もうそれでいい…


夕陽を自分の身体の中に閉じ込めて、そんな事を思っていた。


どれくらいこうしていたのだろう?


その間、ずっと俺の手をトントン擦る夕陽。

子どもをあやすみたいで、ちょっと癪に触るけど

安心してしまう…。


だせぇな。俺。


バカみたいに、お前に会いたくて会いたくて、たった10日がこんなに長くて…


やっと会えたのに…

こんなだし…


これから先、どうしたらいいかなんて、全く考えらんねぇよ。

わかんねぇよ…


でも…いつも…ありがとう…




『帰るか?』

『うん』



ふわ。

と離された腕。



サァー――…ッ


その時、2人の間に鋭い光を帯びた風が抜けた…



夏の予感。



それは…

あたし達を隔てようとする

風だったの?



もしくは…


あたしたちの距離を示す…

風?



『今日、空港のお迎え…嬉しかったよ』

『あー』



あたし達はまだ何にも気付いていなかった。


自分達の「過去」とは向き合ってきた。


でも…まだ


自分達の「今」とは向き合っていない事に…



全く気付いていなかったの…