夕陽は自分を包む彼の腕を、手を…優しく優しく…宥めるように触れる。




夕陽はいつも…




俺の知ってる言葉では上手く言えないんだ。


もう5年も見る事も、むしろ触る事もできなかった手紙。

どうしてお前に話したのかもわからない。


だって、お前に言うこともやることも…

いつからか…

すべて無意識だから…


でも一緒に居て欲しいと思った。

夕陽に…居て欲しかったんだ。


なぜかなんて、自分の事なのに全くわからないんだ。


強いて言うならそれは本能で…


"腹が減ったから飯を食う"みたいに…

"夕陽だから居て欲しい"と思った。


だって…腹が減る仕組みを、身体の細胞仕組みを…いちいち腹が減る度に考えたりはしないだろう?


一緒に居てくれて、ありがとうと心底思う。


手紙は空に溶けていった。


存在を無くしたくないからではないんだ。


存在を永遠にする為で…


チョコレートをふざけて燃やすのとは違う。



きっと夕陽はわかっているだろう?

俺の不甲斐なさ。


ヒネくれるしかできないんだ…