シーン




『そっか。良かったね?』


何にも言葉を続けない大斗に、いきなり言ってみた。


『死にかけたから…今がある…でしょ?』


彼は「何でわかるんだ?」と言葉の代わりにそんな顔。



『そう…だな…』


そしてやっと口を開く。


『だって…だから…咲さんに出会って、しげさんや雪那さんや、恭次くんに会って、色んな事や想いを知ったんだもんね?!』


『あー』


5年も放置されていたお墓は、こんなに整備されてるはずないんだよ…。

誰かが、来てる証拠…

大斗を見守る誰か…「誰か達」がいるってことなんだよ…?


気づいてる、よね…?大斗…?


『大斗が死にかけなかったら…もしかして、全部無かったかもしれないじゃない?だから、良かったって思ったら何だか嬉しね、みたいな…』


かなり変な文。


『言うね…お前。』

大斗をチラッと見たら、ちょっと笑った生意気顔をしていた。


『うん♪』


だから元気に返事をしたの。


『てめえ、何様だコラ?』


全く恐くない声で悪態吐いて小突かれた。


『俺サマよ♪』


と言ってあたしはまた前を向く。



そして…



『そう思う。夕陽にも会えたしね』



頭の上から降ってきた言葉…


ぎゅっと彼の胸に再び納められた。


『何か違ったら、お前に会うことも無かったかも…。』


あたしの耳の横で聞こえる大斗の…声

ひねくれた大斗でない、素直な…彼の、声…?


『あり、ありがと…』


案の定どもってしまった…


『こっちこそ…』


なんだか…恥ずかしい…


そんなふうに言ってくれるのね?


くすぐったいよ…大斗。


嬉しいよ…大斗。


ありがとう…大斗…。