それが何か頭で理解する前に彼女の左腕を掴んで、自分の頭の上を通すように右側に持ってきた。

そのまま円を描くように引っ張り込む。


『わぁー』


ぽすん。



俺のあぐらで座る上に…俺の身体の中に、夕陽を座らせた。


今度は俺が、後からそっとその身体を包み込むように抱き締める。


夕陽の肩に頭を乗せて項垂れた。



"胸がいっぱい"

というのは、こんな気持ちなんじゃないだろうか…


夕陽の言葉にそんな想いを抱いたんだ。


『も、もし明日以降したら絶交するからねっ』


最近、ふざけながらも夕陽に触ろうとしてしまう、俺へ…の言葉か…?

夕陽は膨れてそう言うと、彼女を抱き締めている俺の

その手に…

自分の手を重ねる…。


『わかった…』


腕の力を強めた。


泣いてしまいそうだったから…


『大斗…大丈夫だよ』


夕陽はまたそう言った。


俺の腕に降るお天気雨…


理由は俺の事…

確実に、だからなんだ…

泣いている夕陽に…


不謹慎にも…


"嬉しい"と思ってしまったんだ。



俺の為に涙を流してくれている夕陽を


とても…





この気持ちは何て言ったらいいんだろうか…




『だけど…大斗の…お母さん、お父さん…』


泣きながらまた話し出す夕陽の声を俺は瞳を瞑って聞く。


『大斗を…』


ふぇ…と涙を増やす彼女。

そして一気に言葉を紡いでいった…



『大斗を産んでくれて
 ありがとう。
 命を消さないでくれて… 
 ありがとう…
 それだけは…
 ありが…』


―ッうわぁぁぁんっ!!!!


ついに声を出して泣き出す夕陽。

今まで何度も夕陽の泣き顔は見たけれど、

今までとは…また違う泣き方だった。