片手は捕まれたまま…

あたしは…気付いたら頷いていて…

大斗は手を離さず…そのまま歩き出した。

あたしの家の方へ


――――――


『荷物多くね?』

準備されたトランクを見てびっくり顔の大斗。

『お、乙女は大変なの』

『バイクじゃ運べないなぁ…』

あたかも空港まで送って行くつもりだったように言っていた。

『大丈夫よ、バスで行く』

『バス停まで行ってやるからね』


そう言った大斗の顔を見たら物凄くホッとして、急に睡魔が襲ってきてしまった。

だって…36時間は寝てないもん…


『ありが…』


あたしは「と」と「う」を言う前にフラリと倒れたらしい…


パタン



リビングに倒れた夕陽をしばらく見つめる…


さて。

コイツをどうしたもんか…

ベッドに運ぶべきだよな?

夕陽の部屋…


ヤバイな。


入った事ねぇ…♪

勝手に運んでったら明日怒るかなぁ♪

でも床とかソファに寝かすのは酷だよな?


てゆーか…

そんなの言い訳で♪

俺が部屋見たいの♪


ニヤリ


魔王が再び降りてきた事はスースー寝息をたてる夕陽は知るよしもない。

小さく鼻唄を歌いながら足取り軽く彼女を担ぎ上げる。

そのまま2階に上がって「部屋はどれかなぁ〜?」と楽しそうに探している。

「これだ!!」とドアを開けると

『ビンゴ♪』

女の子らしい彼女の部屋。


楽しいなぁ♪なははぁ〜♪


それで良いのか?!神崎大斗?!!

今の彼には…天の声も届くはずない。


何にもしないって言ったの却下してもいいかなぁ…?


にこにこ夕陽をベッドに寝かす。


無防備だなぁコイツ♪

あぁすげー楽しい♪


――――――――


大斗が危ないヤツだってわかっているのに…

どうしてか、いつも力が抜けてしまう…

困ったもんだなぁ…


なんだろう?

顔に感じる、この温かさ…


あたしは…なんだかよくわからない穏やかな夢を見ていた。

そのまま朝まで寝てしまい…


目覚めた。