『うん…』

『お前の親は不器用なんじゃねぇの?わかんねぇけど。距離置いたままじゃ本当の事わかんねぇよ。ぶち当たってみなきゃわかんないだろ?』

『そうだけど…』

『子どもなんだから、我が儘とかすればいい。俺は出来なかったけど、しげさん達に好き放題したら…すげー気持ち落ち着いた。お前には本当の親が居るだろうが』

『大斗…』

『大丈夫だ。夕陽が墜ちたら一緒に墜ちてやるって言っただろ?』


初詣の時…


大斗の真剣な顔。


引っ張りあげてくれるんだよね…?


『だから…これお前が持ってろ。御守り』

「御守りになるかな?」と苦笑いしながらあたしに手紙を渡してきた。


『大丈夫だから』


何が…大丈夫なんだろうか…?

そう思ったけれど、大斗の瞳に射ぬかれて…

頷く事しかできなかった。


『よし!!話しは終わった。天気良いからどっか行く?』

途端に張り詰まった空気を壊し大斗は言った。


『え…えっと…』

夕陽は突然の事で何も言えない。

『あ!!』

そう言って大斗は夕陽の腕を引く。


――――――


ザザーン

ザザーン ザザーン…


『久しぶりだぁ』


12月以来…


着いたのはいつもの海だった。


大斗は遠くの山を指差す。


『わぁ!』

夕陽は思わず感嘆する


向こうに見える山々が桃色に色付いていた。


『桜!!』

『春だな』

自分達の近所はまだ咲いていないけれど、少し南側のこの辺は、春が顔を出していた。


チェリーブロッサム…桜の花。


『咲さん…思い出す』


『そうか?』


『あの優しい桃色は咲さんみたいだよ』


『そうか…?』


2人でしばらく山の桜を見つめていた。


大斗は何を思っているのかな…

あたしは…ポケットの中の手紙の上に…

そっと手を置いた…


よし。頑張ろう…