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『夕陽ちゃん、大丈夫かい?』


マスターはそう言って温かいハーブティを出してくれた。


『しばらく大斗を追い払ったから安心してね』


夕陽は苦笑いで頷いた。


『このハーブティは僕がブレンドしたんだよ。葉っぱを瓶に入れたからホワイトデーにもらってね』


とラッピングされた可愛い瓶を差し出す。


『ありがとうございます』

彼女は悩んだ末、スイートブルーに戻ってきていたのだ。


『なんだか、僕が呼んだのにこんなことになってしまって済まないね…』


『いえ…しげさんは何にも悪くないです。あたしが、勝手に当たり散らしただけで…』


『大斗に辛いこと言われた?なんかされた?』

夕陽は首を振る。


『辛いって言うか…。大斗とあたし、仲良いと思うんです。それで周りに「付き合ってないの?」とか「大斗に近づくなー」とか言われちゃって…』


紅茶を口に運ぶと柔らかい花の香りが夕陽の心の波を静めていく。

『いい香り…』

夕陽の表情が和らぐ。


『最近、恋とかわからないし、大斗は男の子だけど友達と思ってる。大斗がどれだけ咲さんが大事かも知ってるし。大斗の女の子遊びも理由も知ってる。だから大斗と色恋とか考えたことない』


騒がしい店内もここだけ妙に静かだった。


『それに…「上手な恋」出来たことないし…恋人より友達の方が、ずっと心地良い気がしちゃうから…』


あたしは…

うまく言えないけど、最近モヤモヤしてる事を言葉にしようと必死だった。


『「恋」を…また、もしちゃんと考えてしまったら、今あたしはすごく惨めになる気がする…』


なんか、変な日本語…


『「恋」って、難しいものだよなぁ?誰でもするし、避けられない事なのに。誰でも「上手な恋」なんて出来ないさ』


マスターはとても優しい声で言った。


『俺はさ、若い時に人の「恋する気持ち」をお金に代えていたから。「恋」と言う分野は未だに苦手でね…』