『「いいかな」って?夕陽の問題だろ。勝手にすればいい。俺には関係ない。』


大斗は冷たく言い放つ。

『夕陽ちゃん!!行こう!!』

『えっちょっと!!戸塚くん…?!』

雅は強引に夕陽を引っ張って行った。

その場に独り残された大斗。


はぁ?!

アイツ…何て言った?

「夕陽が好きだ」と?

ふざけんな!!

なめたこと言ってんじゃねぇよ!!


ガッコーン!!!


大斗は傍にあったゴミ箱を思いっきり蹴飛ばした。

中味が飛び、箱がゴロゴロと鈍い音を出して転がって行った。



『大斗?!』

その音を聞いて、なかなか戻ってこない大斗を見にマスターが出てきた。

『お前…なんつー顔してるんだ?』

大斗はただマスターを睨み付ける。


――――――


『ちょっ雅君!待って?!』

はぁはぁする息を落ち着かせようと必死に深呼吸をしながら夕陽は言った。

雅は夕陽を広場まで引っ張って来ていた。

『夕陽ちゃん…いきなり、勢いで、あんな事言って…ゴメンね』





暫くの沈黙。


夕陽の呼吸が落ち着くと、雅は再び口を開いた。


『もう一度言うね。俺、夕陽ちゃんが好きなんだ。俺と付き合って欲しい』


いつもの柔らかな声や表情ではなく…

真剣な男の子の顔の雅君がいた。



『神崎に遠慮してた自分がバカバカしい』


あたしは、あまりにも驚いてしまって呆然と彼を見ていた。


『全く…気付かなかった?』


雅君の問いに首を縦に振るだけ。


『そっかぁ…そんな気してたけど…』


寂しそうに続けた。


あたし…


―――――――


『おい!!大斗!!』


ゴンッ!!


マスターは大斗の頭を軽く殴り付ける。

『何があったかちゃんと言え』

『…』



マスターは落ちている鞄に気が付いた。学生鞄だ。

『夕陽ちゃん…か?』

大斗は無言のまま鞄を拾う。

『いいか?大斗。もう咲は居ないんだ。お前の逃げ場はない。どうにか自分でやるしかないんだぞ』