――

夕陽の涙が、わっと溢れた…

俺は…何をしてるんだ…?

瞳の前に居るのは咲じゃない…

わかってる…咲を見ているわけじゃない…

瞳の前に居るのが夕陽だってわかっている…


『夕陽が…温かい…から…』


自分でも言おうとしていた事じゃない言葉が勝手に出てきてしまう…

夕陽の体温に…ただ…気持ちがホッとしてしまったんだ…


俺は…どうしたんだ?

もう…何にもわかんねぇよ…



『大斗…いやぁ…嫌だ…』

――

あたしの「やだ」は、咲さんの名前を口にする大斗にじゃない…

半、襲われてる状態のあたしの抵抗する言葉でもない


大斗の不安とか…苦しみとか…

大斗にとって咲さんがどれだけ大きいか…

その想いが…気持ちが痛いくらい伝わるから…


キスなんて、いくらでもしていいから…


それで大斗の心が少しでも楽になるならば…

それでもいいから…


『嫌だ…大斗の心が…苦しいって言ってるままが…嫌だ…』


あたしはなんてわけわからない日本語を言っているのだろう…

自分の事は既にほったらかしでよかった…


だって…大斗の涙の出ていないその顔が、

涙を流すよりも悲しいと表現している顔だったから…。

涙に変えて苦しみを出せ無い分…

酷く辛そうな顔をしているから…


『泣、いて…いッい、んっだ…よ…ッ』

言葉がうまく喋れないくらいにあたしはグズグズ…

もう駄目だ。


これ以上泣けないくらい泣いていたのに…

『うわぁぁぁぁん!!』

もっともっと泣いた。


『大斗が…泣か…ない、なら…あ…たしが、あたしが代わりに…泣…く…。おと、このこは…ひろ、とは…いまは…もう…泣か、ない…人だ、から…』


嗚咽混じりに言った。


あたしは大斗に…何ができる…?