『ねぇ?「咲ちゃん」って昨日電話で話してた人でしょ?』


夕陽は何と無くそんな気がして聞いてみた。


『そ。キャバ嬢の変の女。まぁ、色々世話になってる。世話してる?みたいな感じ。今度片桐さんにも会わせてあげるよ。』


嬉しそうに話してくれる。

「彼女」とも「好きな人」とも言わないけれど「咲さん」の話をする神崎君はとても穏やかな表情をする…。


『そろそろ一時間目終わるけど、俺は教室行こうかな。片桐さんは?』


携帯を開けて時間を確認しながら大斗は言う。


『いっ行く!』


夕陽が勢いで返事をすると大斗は柔らかく笑った。



すぐ授業の終りを知らせるチャイムが鳴ったので、2人で教室に向かった。



ガラッ!


休み時間に教室のドアを開けると


『あー帰ってきた!!みなみー2人来たよ!!』


夕陽に気付いた杏が南深を呼ぶ。


『あ。神崎君も一緒だぁ。恭次から聞いてるよぉ』


南深がやって来た。


『そうなんだ。2人とも恭次の友達?いやぁ、やっと学校来たって気がするよ。残り何時間?なんか俺有名なんだって?よろしくね』


えっ営業スマイル?!


大斗は爽やかに南深達に挨拶する。


『恭次からさっき会ったってメールきたよ。さっそく「ひぃちゃん」だってね?アイツ馬鹿だから…』


パーマがかったショートヘアが揺れる。


可愛いらしい南深は恭次の名前を出す。


『恭次と南深は幼なじみなんだわ、あたしは彼氏が恭次の友達だったから知り合い。聞いてたけど、神崎も男前だねぇ♪』


"良いものは認める"って感じに杏が答える。


『良くわかってるね、ありがとう』



このお調子モノ…。



キーンコーン カーンコーン


チャイムと同時に先生が入ってきた。

どうやら次は数学で担任の授業らしい。


あたし…担任の受け持つ授業も時間割りも何も知らなかった…。