"良く辿り着いたな"なんて、少し冷静さを取り戻すと思ってしまった。
ふぅ…
あたしは…
ここまで来たのはいいけれど…
何をしたらいいんだろう…
何がしたいんだろう…
そのまま玄関前で立ち尽くす。
ガスンッ!!
パリーン!!
ガンッ!!
えっ?!!
部屋からは何かの音が聞こえる
なに?
そっと取っ手を回してみた。
開いてる…
バンッ!!
勢い良く扉を開けると…
『大斗!?』
ガンッ!!
雑誌が飛んできて目の前を横切り壁に当たってドサッと落ちた。
真っ暗の部屋、夕陽の視界には…
『よっ♪夕陽♪』
陽気に挨拶する大斗が、上半身に何も着てないままベッドに座っていた。
『「よっ♪」って…これ…』
彼の回りには雑誌やら服やら彼の持ち物が四方八方散らばっている。
中身が溢れたまま倒れているビールの缶…
『あんた…何やってんの?』
部屋中グチャグチャじゃない…
『室内バスケ♪』
全く明かりが点ていない部屋、月明かりだけの空間。
『はい…?』
どうやら大斗は部屋のモノをあちこちに投げ飛ばしているようだ。
『おぃっ♪何でそんなとこ突っ立ってんだよ♪?』
明るくそんな質問されても困る。
『お前もやる♪?』
大斗が指差す先には、流し台。
そこには他の所に増してモノが散らばり雑誌と共にグラスや茶碗が割れていた。
『ちょ…っ?!』
大斗は可笑しな笑みを溢しながら、
『そこがゴールなの♪』
大斗…
冷たい笑い…?
ぼぅっとしているのに言葉だけは浮かれている。
『大斗…なんて、顔…してんの?』
その言葉を聞いて、大斗はCDケースを投げようとしていた手を下げた。
そして夕陽を見据える。
月明かりを背景に、酷く冷たい空気を漂わせて…
―…ッ
『ひろとーっ!!』
あたしは大斗の座るベッドに駆け込んだ。