咲さんと別れて、かなりな勢いで走っていた。
ここが何処だかいまいちわからないけど、街の一角であることは知ってる。
クリスマスの煌めきも、あたしにとったら…咲さんの涙に敵うものはなかった。
あたしが…泣いてる場合じゃないっ…!!
―――――
「咲さん…?あたしなりって…?」
「友達とか恋人とか知り合いとか…どうでもいいわ。間違いなくあたしたちは出会ったの。偶然は必然…本能の先にあるものは、自分の心だから…」
「どういう…こと…?」
「"何か"なんて関係ない。夕陽ちゃんも、したいことをすればいいって事。その意味はいずれわかるわ。自分で見つけられるから…」
「じゃぁ…大斗…は?」
返事の言葉の代わりに紡がれたのは…
咲さんの美しい涙だった…
――――――
大斗は今を越えなきゃ駄目だけど、心配で堪らないって…
聞こえた…から…
あたしが行く意味があるかはわからない
咲さんの言う事の意味はよくわからなかったけれど…
咲さんの出した答えが、正しいなんてやっぱり思えないけれど…
でも咲さんはあたしを呼んだから
あの時、そこに居たのはあたしだったから…
だから走った。
――――――
「夕陽ちゃんは不思議な子ね…言うつもりなかった事まで言っちゃった…」
「へっ…?」
「光輝の事…大斗に詳しく話してないの…」
「何で言わないんですか!!駄目だよ!!ちゃんと言わなきゃ!!ちょっと…だって!!いいい、いつ…咲さんは行っちゃうんですか?」
「明日…ってゆうかもう今日かな?朝8時半の…飛行き…」
「今日っ?!咲さんのバカ!!」
「えっ…ごめっ」
――――――
あたしっ行かなきゃ!!
咲さんの言葉を最後まで聞かない内にビルの屋上を飛び出していた。
思わず咲さんに「バカ!!」と叫んでた事に自分で気付きもしなかった。
大斗っ!!
タクシーとか考える余裕なんてなくて、勢い任せに猛ダッシュで街を駆け抜けて、気付いたら大斗の家の前。
走りながらかけた電話は依然留守電。
玄関の前で少し呼吸を整えてみる。