『無茶苦茶だったけど…そうして、あたしも大斗も沢山笑うようになった。いつの間にか、あたしは大斗の事ばかり考えるようになっていた』


夕陽は頷く。

2人の間に風が抜ける…


何て冷たい風…


『初めはね…大斗の為って言いながら…、光輝…別れた彼氏をね、考えたくなくて大斗を連れ回してたのに…いつの間にか光輝の事なんて忘れてた。』


ネオンのキラキラが咲さんの涙に見えてしまう…


『あたしの頭ん中は、いつの間にか大斗でいっぱいになっていた。大斗とバカやって笑うのが楽しくって』


そんなの…

知ってる…


『それは…大斗だって…』

咲は首を振る。


『違うんだ。そうなんだけど、違うの…』


何を…

言っているの?


『大斗はただ何も知らなかった。だからそこに居たのが、たまたまあたしで、あたししか世界に居なかったから、必然的にあたししか見えなくなっただけ…』


『そんな…』


そんなことないっ


『あたしは!!そこに居たのがたまたま咲さんだったとしても、他の人だったら駄目だったと思う!!だって…』


だって…


『咲さんの話しする大斗も、咲さんと話す大斗も、他では見せない顔をする。とても穏やかに笑う。他の人じゃ駄目だよ。咲さんだからでしょ?』


『違うのよ…夕陽ちゃん…』

『何が違うんですか!!』


大きな声を出してしまった。

雪の日に大斗に言った時みたいに。

泣きそうっ…

それを必死で耐えた。


『もどかしいよ!!大斗も咲さんも!!あたしは…苦しい…!!2人を見てると胸が苦しい!!』


また同じ事を…

でも駄目だ。

言わないわけにはいられない。


『夕陽ちゃん…あたしと大斗は、お互いがいなくちゃ自分が立っていられない…』

夕陽の瞳を捕らえて咲は言う。

『そんなの見てればわかります!!』


だから…


『だから、一緒にいるんでしょ?!一緒にいなくちゃいけないんでしょ?!』


『違うんだよっ!!』

今度は咲が声をあげた。