2人に何度もかけ直すが、受話器がとられることはなかった。


タクシーはあっという間に咲の指定した場所。


ネオンが煌めく呑み屋のビル…

でも夕陽の視界は依然真っ暗で、

ネオンの光も全く見えていなかった。


わけわからないまま、エレベーターに乗り込んだ。

ビルの10階。

屋上に続くであろう階段を一気に駆け上がった。


バンッ!!


『咲さん??!!』


「一度切るね…」と電話を切った咲が振り向く。


『夕陽ちゃん…!』


ふわりと笑った、咲さんの顔は…

やっぱり、吸い込まれそうだった…

なのに、寂しさが湧いてくる…

癒される笑顔じゃない…

どうして、そんなに悲しい顔をしてるの?!



『咲さん!!』

『ごめんね…呼び出しちゃって…』



『いいんです、そんなのどうでも…!!何があったんですか?!』

ゼーゼーしながら夕陽は捲し立てる。

『あのメール…最後って…何?』

『夕陽ちゃん…落ち着いて…』

『落ち着いてますっ!!違います!!落ち着けるはずないです!!』


駄目だ…

あたし、何言ってんの?


『ネックレス…付けてくれてるんだ?』

咲は不意に言った。

夕陽の胸元には、咲がくれたネックレス。


咲は微笑む。


『あ、あの日…大斗に付けてもらって、ずっとしてます…』


ネックレスを握った。

少しずつ世界に光が戻ってくる…

咲さんの力…?


咲の背景に街の明かりが映し出された。

夕陽は深く深く深呼吸をする。


『すみません…』

『うううん、あたしこそ…クリスマスイヴに変なメールごめんね…』

夕陽は首を振った。


咲は口を開く…


『あたしね…今日1日、ずっと大斗と…いたの』


夕陽は咲を見つめる。


これから何を言われるのか、不安でしょうがない…