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昨晩の粉雪は数時間の内に世界を白銀に染めていた。


朝になると、雪はすっかり降りやみ、煌々と照らす太陽の下で、辺り一面キラキラ輝く銀色の絨毯が広がっていた。


歩きにくい道も何故かだか嫌にならないくらいの晴天で

いつか海風に吹かれながら思ったように…


違う世界に来てしまったみたい…


と錯覚させられた。


『良い天気…♪』


いつものように学校にやって来た夕陽。

心を洗うような冬の冷たい空気が心地よく、窮屈な教室で授業をする気になんてなれるはずもない

足は勝手に学校の天辺に向かっていた。


あ♪やっぱり、鍵開いてる。


独りクスッと小さく笑いながら屋上の扉を静かに開ける。

『あれ?』


大斗…じゃない?


『ひぃちゃん?おはよう♪』

雑誌を被せて寝転んでいた人が顔を見せた。

『ほらやっぱり♪声でわかったー!!』

『またこんな本…。恭次くん、おはよ♪大斗は?』


こんな日はここに居ると思ったのに…まだ来てないのかな?


『こんな本なんてヒドい…僕らのアイドルナンシーちゃん♪』

と恭次はエロ本を抱きしめて

『大斗あっち…!何かね?!雪が綺麗だから雪だるま作るんだって、モテモテ男子高生がメルヘンに何言ってんだか…』

とため息一つ、屋上の裏側を指しながら苦笑い。


夕陽はその方へ行ってみる。


あ…居た。


『何やってんの?』

『雪だるま作ってる♪』


それは知ってるけど…


『俺、雪だるま作るの初めて♪』

何を浮かれているのか大斗はとても楽しそうに言った。


何だか昨日の事が嘘みたいに明るいし。

大斗とは、ちょっと気まずい事あってもやっぱり普通に話せる。

ちょっと安心するよ…


『さすがに雪だるまくらい作るでしょ?あんた…どんな幼少時代を過ごしたのよ?』

『思い出すのも過酷な人生さ…』


しまった…また余計な事を言ってしまったかな…