『ッッっってぇ…!!!!…ヒドイぜナンシー…ッ!!



いってぇ…コノヤロ。

角がオデコに直撃だっつうの…!!


オデコを擦りながら起き上がると「まだ言うか?!」と言わんばかり、エロ本を持ち振りかぶる体勢の夕陽。

無言で顔を赤くした怒り顔である。


『ナ、ナンシーって誰よ?』

『ロシア美女♪』

『バカ!?対面に見せるパンツはないわっ』


もう一度「金髪美女」が投げられたが、大斗は両手でうまくキャッチする。


さすが俺♪


『昨日会ったし、初対面じゃないじゃん。学校来たんだね、片桐さん♪』



この女、なんで屋上にいるんだ?

俺、鍵かけたよな?


『なんで屋上にいるの?』


大斗が聞きたかったことを先に夕陽に聞かれてしまった。

そして、夕陽は彼の手から「金髪美女」を奪い座布団がわりにして隣に座る。


『俺のナンシーが…』


大斗の呟きを全く無視する夕陽にポケットから屋上の鍵を出し見せてあげる。


『俺の友達が先輩からもらったやつ。屋上鍵かかってて入れないから。片桐さんはどうやって入ったの?』


そして煙草に火を点ける大斗に彼女は、はぁーとため息を吐き、


『鍵かけそびれてるよ…すっごいまぬけ、、、』


夕陽は笑いをこらえて言った。


『うっそぉ。僕の秘密…』

重い腰を上げて扉を見に行くと、


なるほど。これは間抜けだ。


キーンコーン カーンコーンコーン…


『あーぁ、チャイムだよ。また教室にいないし』


授業を知らせるチャイムが屋上の風を切る。


『今から急げば間に合うんじゃん?』


戻る気0の大斗は座り直す。


『入る時は先生来てるかもだし、もう恥ずかしくって行けないよ。そもそも凄い注目されてるんだってば、あたしたち。毎日学校いないから…』


ちょっとうなだれて夕陽。

『有名人♪嬉しいじゃん』

大斗がシレッと返すと


『前向きで幸せね…』

と言われてしまった。