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なんなんだよアイツは…
別にアイツに言われなくても…
あーっ腹立つ。
夕陽が行ってしまうと大斗は不機嫌に店に戻ってきた。
『大斗。どうした?』
マスターが大斗に問いかける。
大斗はマスターを一瞬見てから何も言わずビールを注いで一気に呑む。
そして、カウンターに突っ伏した。
『ムカツク…』
と一言。
そんな大斗をマスターは優しい顔で見ていた。
『俺…自分がムカツク…』
『お前も、少し変わったか?』
『何だよ…それ?』
『外…雪が降ってる…お前が初めてここに来た日を思い出すよ』
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夕陽は家に着くとすぐに携帯をとろうと鞄を探った。
あ…そうだ…カウンター…忘れて…
『マスターの名刺!!確かお財布に!!』
財布を出す…
『大斗…』
大斗が拓ちゃんを忘れるためにくれたお財布。
なのにあたしは…
なんて酷い事を言ってしまったんだろう…
そう思いながら、家の電話でスイートブルーにかけた。
〈はい。スイート…『マ、マスター…?』
〈夕陽ちゃん?!!〉
『携帯…店に忘れて…大斗…』
〈夕陽ちゃん?〉
マスターは優しく問いかける。
それが「大丈夫かい?」と言っているようだった。
『あたし、大斗に…酷いこと…言っちゃった…』
〈そうか。ありがとう。〉
『え…?』
ピンポーン!
―――――
「夕陽ちゃん、携帯忘れていったよ。届けて来なよ。ケーキも持ってけ」
「やだ」
「全く、大斗は…。外の雪は綺麗な粉雪だよ?気がついてるかい?」
「―…」
――…ッ!!
大斗は夕陽の携帯を掴むとBarから出ていった。
――――――
ピンポーン!!
〈誰か来たみたいだね?きっと大斗だよ。〉
ツーツーツー。
一方的に電話は切られてしまった。
ピンポーン!!
再び聞こえるインターホン。
夕陽は受話器を放り投げると玄関に向かう。
『大斗っ!?』