夕陽の言葉に

『そっかぁ…あたし…』

咲は上を向いて瞳を閉じて言った。


そして、瞳を開き…


『はぁ…やっぱり、駄目ね…』

しっかりと夕陽を見る。


『あたし…自分の事ばっかりで、最近大斗の話し全然聞いてなかったよ…』

『咲…さん…?』


咲さんはあたしの顔を、瞳を見据えて、言う。

悲しく笑うその顔から…

やっぱり瞳を反らすことはできなかった…


『夕陽ちゃん…』

『は、はい…』

『あたし、もう大丈夫。気持ち、うん、平気。わかったよ…』

『な、何がですか?』

咲は首を振る。

『どうしたんですか?』


それから…咲さんは、吸い込まれそうな笑顔で言った。


『あたし…世界で一番大斗が好きだよ』


とても綺麗な顔で…そう言った。


『おーい、ブス2人~?!』

離れた所から声がして、大斗が戻ってきた。


咲の言葉で真っ赤な顔の夕陽。

『また何事だ?お前らは』

片眉下げた、咲と同じあの顔で問いかける。


『ゴメン行くね…仕事』

咲は振り向かずに行ってしまった。



「世界で一番、大斗が好きだよ」


あたしをしっかりと見つめて言う咲さんの…

真っ直ぐな想い…

でも、ひどく悲しくなるのは何でだろう…?

咲さんが泣いているように見えるのは何でだろう…?

その場に残されたあたしは、大斗に声をかけられてもしばらく咲さんが出ていった扉を見つめていた。


「あのドアが開く度に新しい物語が舞い込むんだ」

いつかマスターが言った言葉を思い出すのは…

何で?


『…―ひ?オイッ!!夕陽?!!』


『わわわっ!!大斗!!』

「何だよ?その驚きは」大斗はいつものように呆れ顔で笑っていた。

『何だろう…』

『はぁ?』


別に何か、あった訳ではない…けど…


『咲さん…変…』

『何か、最近あんな…何なんだろうな?』



そういう大斗は寂しそうだった。

ねぇ大斗?

本当に何もわからないの?

大斗なら本当は…

人の心を敏感に感じられる大斗なら…