『もうすぐ…X mas、ね…』
遠くを見て咲が言った。
『大斗君?!』
カウンターの端で女の人が大斗を呼ぶ。
いつもの光景。
大斗は呼ばれた元へ行ってしまった。
『相変わらずバカ…』
苦笑いで咲は呟く…
咲さん…?
『咲さんって…大斗が、ああして誰かと話したり…あの、その…仕事の後…とか遊んでたりするの、嫌じゃないんですか?』
咲さんの悲しそうな顔…見てたら、
つい…言ってしまった。
咲は夕陽に向き直り口を開いた。
『夕陽ちゃんは嫌?』
『へっ…?』
思わず出てしまった間抜けな呟き。
嫌?どうだろう…?
考えた事…ない…
予想してなかったことを…
質問を質問で返されてしまった。
『ゴメン…変なこと聞いちゃったね』
咲は片眉下げて小さく笑う。
大斗が…よくする顔と同じ…
『あたし…正直、良い気はしないよ…。嫌じゃないって言ったら絶対に嘘になる。けど、前にも言ったけど、あたしが大斗に「あぁしろ」って…言ったの…』
咲さんは、涙を落とす変わりに笑った。
あたしには、そんなふうに見えてしまった。
『あいつは、一度死にかけた。うううん、初めから死んでた。この世を生き抜くには、もっと強くならなきゃいけない。涙は流すけど、ただの機械みたいだった…。人じゃなかったあいつは…人に、ならなきゃいけない』
あたしを見つめる瞳の奥の…
咲さんの強い想いがあたしを貫く。
『その術を…自分で見つけなくちゃいけないの。自分の心を、見つけなくちゃいけない。大斗はそういうのすごく欠けてる。』
咲さんの今まで見たことのない…切ない顔…
『人を愛する気持ちを誰かに言われたんじゃなくて自然と身に付けなくちゃいけない、自分の力で…』
咲さんの心は大斗が好きって言ってるはず、なのに…
大斗だって…きっと…
『悔しいけど、あたしじゃ力不足…。あたしがとても歪んだ人間だから…』
ちがう!!
『そんなことないです!!』
夕陽は思わず大声を出してしまった。