『ああ!!もう!!別に理由なんてないよ。大斗にしたら挨拶みたいなもん。アイツ学校ではあんまり出さないけど、女グセ超悪いのっ!!』

やれやれとカップを降ろし答える。

『相手は本能で生きる神崎大斗よ。大斗がした事、理由なんて無いから、あたし気にしてないし。』

『でも…』

南深は何か言いた気だった。

『でも、ひぃちゃん。そんなもの?ひぃちゃんは何とも思わなかったの?』

と杏。


何とも…?

かぁ…

あたし、大斗とキスして…?


『なんかさ、そりゃぁ…驚いたけど、そのお陰って言うのも嫌だけど、結構な修羅場を切り抜けられたっていうか…誤魔化せたって言うか…。』


感謝しちゃったって言うのも一概に嘘ではない…


『大斗にしたら、たぶん言葉の代わりに励ましてくれたんだろうって…思う、から…』

少し思い出しながら話す。


『大斗は…やってること無茶苦茶だけど、あたしがどん底に落ちなくて済んだのは事実だし。パニックしててキスがどうとかじゃなかったよ…。まぁいっかって、それくらい。』

と一気に続けた。


『そう…なの?』

南深が呟く。


『まぁ、ひぃが別に何とも思わないならいいけど…神崎の考えてることわかんないねぇ…?』

杏が優しく言った。

『大斗はね、多分色んなこと、したり言ったり理由なんてないよ。全部思い付き。そんなこと前に言ってたし…。気にするだけ無駄かなって…。ってかっ!!思い出したらなんか腹立ってきた!!あのヤロウっ!!』

『ひーちゃん、言葉…怖いっ!!』

『あーっ!!何か大斗に文句言いたくなってきちゃった!!』


2人は驚いて夕陽を見る。

そして夕陽は、ふと窓の外を見ながら…


『大斗には咲さんがいるから。それに本当にあたし、大斗のこと男の子として好きとは思わないんだ、拓ちゃんの時とは気持ち違うの。大斗には心臓10個にならない』


今日も忙しく人は流れていく…


『10個?』

『好きすぎてドキドキするってこと。あたし…結構拓ちゃんずーと引きずっててさ…バカなこと沢山してた…けど…』