『平気な振りしてるけど…俺…今も、けっこー駄目みたいで…』
と弱々しく呟いた。
『退院してすぐの頃とか、目が…覚めても真っ暗なんだ。夜だから、とかじゃなくて…』
更にゆっくり大斗は話しだす。
『目覚めて、ぼーっとしてると、その内に咲が来て…なんか、ずっと文句言ってるんだけど、そんなの耳から素通り…』
大斗の昔話…その頃の大斗の気持ち…
『喋れなくなったの相当パニクった。自分では…話そうとしてんだけど、音になって出てこないんだ。最初、耳、聞こえなくなった…と思った…』
苦しい…あたし、苦しいよ…
『何もかも真っ暗…。弾みで、喋れるようになって、すげー安心した…元からあんま喋んなかったのに…』
ハハッと小さく笑って続ける。
『今考えると、子どもっぽくない小学生だった…。それから咲に言われるまま、遊びだして…バカやって…真っ暗い何かを無理やり消すために、それを見ず知らずのヤツらにぶつけた…。何でも良かったし誰でも良かった。』
大斗は遠くを見ながら話し続ける。
『でもさ…、結局消えるのは、その一瞬だけ。その後に…もっとそれ以上、暗いのが襲ってくるんだ。だからまた繰り返してしまう…』
『ひろとぉ…』
何を言ってあげたらいいんだろう…
『でさ、何か気付いたら知らない女が色んなとこから来て、別に全く感情がないのに…結局…何かしてなきゃ駄目だったから。その為にそういう奴等とヤって…でも闇が消えんのやっぱ一瞬だけ…』
とスプーンを止めた。
『こんな事ばかりしててさ、誰かを"好きだ"とか…そういうのわかる前に、やることだけやるを繰り返して…。気付いたら全くわからない。人の事は、わかるのに…自分の感情は今一わかんねぇ…』
夕陽の顔をじっと見据えて言う。
『ただ…何も考えたくない…だからいつも思い付いたまま…する…こんなんじゃ駄目だ…咲と底に落ちても本当は駄目なんだ…』
大斗の辛そうな顔があたしの胸を突き刺した…
『本当はわかってるのに、他にどうしたらいいのか、自分を保ってられるのか、わかんねぇんだ。不安で…しょうがねんだ…』
夕陽から目を反らし立ち上がるとフラフラとベットに向かう。