玄関を開ける小さな音で大斗は目覚めた。

『ゆーひ…?』

ベットに寝たまま彼は小さく呼ぶ。

夕陽は切ない表情で、

『大丈夫?』

と返した。


『あれ…?来て、くれたんだ…?ありが、とう…』


大斗の「ありがとう」なんて、初めて聞いた気がする…。

それに…今来たと思ってる?


『大斗…すごい熱みたい…』

体温計を差し出すと彼は言われるがまま熱を計り出す。


――――


『40.5℃って…あんた本当に死ぬよ…』

体温計を見て夕陽は焦る。

大斗は焦点合わずぼーっとしている。


『腹、減った…』

虚ろ虚ろと呟く。

『ちょっと?!食欲あるわけ??』

大斗は黙って頷いた。


彼女が台所に立つ姿をじーっと見つめる大斗。

『昔…病院入ってから、目の前に食べ物、沢山出てきて…きっと、病院食だし、たいしたことないんだろう、けど…3食食えるなんて、あり得なくて…退院しても気が狂ったみたいに食べた。』

夕陽の背中に話しかける。


『それで、気が付いたら大食いになってたってことね?』

とお粥を差し出した。

『これだけ身体立派になっちゃってね…幸せじゃない?熱があっても食欲あるくらいだもの。良かったね、今生きてて…』

と微笑む。

『お前…日本語変…』

夕陽はティッシュの箱をポイッと投げつけて、

『減らず口叩けるなら、あんたはまだ死なないわ』

と怒って返す。

大斗は黙々とお粥を食べている。

『たまに…色々、夢みる…今も、嫌な夢見た。夢ん中で、また刺される。誰かをメチャメチャに…殴ったり、喧嘩する、夢も…みる…。昔してた事の夢…』

夕陽は大斗をじっと見つめる。