『てんちょーっ!!』
勢い良く扉が開くと大斗と夕陽がギャアギャアしながら入ってきた。
『―…』
咲はビックリして固まっている。
『しげじぃ聞けよ!!こいつ準備に1時間も待たすんだ!!』
『だって大斗が何にも言わずに突然家に来るからいけないんでしょ?世の中、携帯電話って言う便利な道具があるのよ?あんた曲がりなりにも今時の高校生でしょ?!』
『うるせぇ。曲がりなりにもって何だよ?喧嘩売ってんのかテメェ!!いいか?携帯なんてなくても生きていけるんだ。つべこべ文句言うなよバカ!!』
『なんなのよ?そのおじさんみたいな発言!!携帯使えないなんて、生まれる時代間違えたんじゃないの?』
『うるせぇ女だな!!黙れブスッ!!』
マスターは騒ぎ立てる2人を見て「いらっしゃい」と、にっこり微笑む。
夕陽はそれに気付いて
『マスター♪その笑顔今日もステキ♪』
「大斗とは天と地ね」と咲とマスターの元に駆け寄った。
大斗は舌打ちして後に続く。
『咲?どうしたんだよ?』
そして、咲の様子が変なのに気付いた大斗はすかざず問う。
『なんでもないよ。眠いの』
素っ気なく咲は答えた。
彼女にとったらこれが今出来る限界だった。
咲は雑誌を大斗達に気付かれないように鞄にしまう。
そしてビール一気に飲んだ。
変な咲…
大斗はいつものように勢いが無い咲の様子に気付くが、何があったかはわかるはずなかった。
月日は11月。
目の前に冬が近づいてくる…。
冷たい冷たい冬が来る…。