『うん。拓ちゃんと結衣さんも、もうすぐ来ると思う』
大斗は"えっ?"と夕陽の顔を見て、また前に向き直り
『そっか』
と一言。
『ありがとう…あたし、大丈夫だよ』
無言の大斗は笑うだけ。
そして2人は並んで歩き出した。
―――――
『大斗先輩!!』
廊下を行く2人の背中に大斗を呼ぶ声。
2人が振り返ると、可愛らしい女の子が立っていた。
『菜穂ちゃん?』
『大斗先輩♪お久しぶりです。会いたかったぁ♪』
と菜穂と呼ばれたその子は大斗に近づき正面から彼の両腕をそっと触る。
夕陽は「えっ?」と横で凝視。
『はいはい、相変わらず元気だな?』
大斗は何気無く彼女の手を離す。
『探したんですよぉ』
あのーあたしの存在無視?!…いいけどさ…
触らぬ神に祟り無しだわ。
夕陽はやれやれと先に歩く。
『大斗、それよろしく』
夕陽は2を残して進んで行った。
『ちょっと夕陽、待てって!!』
大斗の声かけに振り向いた夕陽は「話しかけるな」とオーラで言って、スタスタ歩き出す。
「先輩」って呼ぶって事は中学生かな?
大斗は年下もいけるのかな?
全く…勝手にすればいい。
――――――――――
『ひぃちゃん。おかえり♪』
夕陽が教室に帰ると南深が声をかける。
『あれ?神崎君は?』
『しらない』
『なんで、ひぃちゃんイライラしてるの?』
素っ気なく答える夕陽に杏が言った。
『イライラ…してないって。着替えて来る』
と夕陽は衣装を持って再び教室から出て行った。
イライラ…なんて、するはずないじゃんかっ
――――――――――
『俺これ教室に運ぶからさ』
大斗は笑顔で言うが、言葉は素っ気ない。
人と距離を置く時の彼の話し方だ。
基本的な大斗はいつもこうだった。
『待ってください。あたしも行きます♪』
菜穂は大斗の後に続いて歩き出す。
『さっきの女の子はぁ先輩の彼女ですか?』
『違うよ。友達』
『ふーん』
菜穂は何を思ったのか一言返す。