『片桐さん?!大丈夫?!』

拓巳がぼーっとしている夕陽に話しかける。


ガタンッ!!


大アップの拓巳の顔にビックリして後ろにイスごとひっくり返りそうになってしまった。

『やややめてよっ拓ちゃんっビックリするし!!苗字で呼ぶから気付かなかったっ』

焦って早口で話す。

拓巳はクスクス笑っている。


この笑顔やめてっ!


夕陽は一気に赤くなる。忙がしい人である。

『ブハッ!!つーか、お前、大分挙動不審だぞ?!はずかしっ。ここで名前で呼べないだろ普通!!バーカ!』

大斗が横から小さく言った。

夕陽は更に真っ赤になって大斗を睨み付けた。


――――
――――――


『あーっ疲れる…』

授業が終わると机に突っ伏して夕陽は項垂れる。

『ひぃちゃん♪』

軽快な呼び声に気付き顔を上げると、にこにこ顔の杏がいた。

『なにー?あんちゃん??』

だらだらと返事をする。

『何?はこっちのセリフよっ?小田桐先生と知り合いなの?』

杏の声にクラスメイトも注目する。


ガタンッ!!


夕陽は驚いて、また思いっきりひっくり返りそうになってしまった。

『コイツ、小田桐が高校生の時にバイトしてた先にたまたま行って、知り合いだったんだってさ』

いきなり、大斗がそこに割って入って来て口を挟む。

『ひぃちゃんってば、いつもいいなぁ~』

『あんちゃん…落ち着いてっ』

夕陽が固い笑顔で返すのに杏は笑いながら

『今度、ゆーくり聞かせてね』

と去って行った。


『はぁ…』

夕陽は再び机に突っ伏し、そのまま大斗に

『ありがとう、誤魔化してくれて…』

と小さく呟いた。


『お前は、佐々原さんとかに小田桐とのこと知られたくないのかよ?』

と聞いてくる。

『―…』

『つーかさ、隠す必要なくねっ?お前の仲良いい友達じゃねぇか、言えばいい』

『あ…』


そっか…そうだ、よね?!


『今度…ちゃんと話す…』

夕陽の小さい言葉を拾い大斗は柔らかく笑って去っていった。