あっ…あ あー
『あー!!!!』
夕陽は突然大声を出した。
『ああ?何だよ?!』
大斗は眉をしかめて問いかける。
『あたし、あたし朝、あんなんなって、ずっと会いたかった拓ちゃんに会って、やっと会えて話せたのに』
『だから何だよ!?』
『た、拓ちゃんとちゃんと別れちゃった…』
あれ?あたし…?!何で??
『はぁ?お前、まだ好きでしょうがねぇんじゃなかったのかよ?なんで「別れ」なんだよ。小田切の様子見たのもあって、俺はてっきり元サヤな方向かと思ってたぞ。正直、今日帰ってこないかと思ってたんだけど、なんだよソレ…?』
予想外?!という大斗の顔だった。
『わ…わかんない…拓ちゃんと話せて、やっと蟠りがなくなって、そしたらスッキリしちゃって…あたし、拓ちゃんの事、今でも変わらず大好きなのに…でも、拓ちゃんが幸せならそれでいいや、嬉しいなって。満足しちゃって…』
あわあわ夕陽は慌てる。
「なんで?なんでだろう?」と自分に問いかけている。
『呆れた…散々心配かけといて、そんなオチかよテメエ…』
『ゴメッ…』
『まっ、別にいいけどね。それが月日が経ったってことだろ?それはそれで良かったんじゃねぇの?』
と大斗は夕陽の言葉を遮り言った。
『…―』
『なるようになったんだ。いいじゃねぇか?!しっかし、「先生と生徒の禁断の恋」でからかおうと思ったのになぁ』
「恭次のDVDでさぁ…」と含み笑いで大斗は続ける。
『何か…大斗と話してると調子狂う。あたしが長年悩んでたことなんて、ちっぽけだったみたいだよ…』
『ちっぽけだったんだよ…』
いきなり冷静な顔つきになって、大斗は答えた。
『お前が自分で思ってたよりずっと…いつのまにか夕陽の中で、ちっちゃいことになってたんだ。想い出は美化される。それにすがり付いてただけだったんだ』
夕陽をしっかり見て話す。
『大丈夫だ。お前はちゃんと進めてる』
『ひろと…』
何だかまた胸が一杯になってしまった。
『ありがとう…』
夕陽はまた小さく呟く。
『俺は何もしてない。お前が自分でやったんだ。自信を持て。明日会うんじゃん。堂々としてろよ』
『うん…』