『あり、ありがとうございます…』
と答えた。
大斗は飲み物を差し出しながら「また噛んでるし」と呟いていた。
彼女は恥ずかしくなって、黙ってグラスを受け取りそれを見つめる。
オレンジ色の綺麗なカクテル。
大斗が作るのはいつもキレイ…
『作品名は「ゆ・う・ひ」です』
と彼はおちゃらけて言う。
へっ?
『さて、「夕陽」でしょうか「夕日」でしょうか??今日の空はキレイだったね♪』
にやにや笑って殿はご機嫌だった。
咲は『バーカ』と呟き、夕陽は『バカ』と小さく呟く。
それが重なった。
大斗がマスターに呼ばれて席を外すと
『夕陽ちゃん、まさか…あの時のが…夕陽ちゃんだったなんて、びっくりしたよ。やっぱりまた助けられたね』
「あ!!時間的には、そっちが昔だから前の指輪拾ってくれたのが「また」のほうか」とブツブツ続ける。
そして、夕陽の顔を見てゆっくりと話し出した。
『あの日…大斗は警察から帰ってきて「不幸なヤツっていっぱいいるんだな」って言ったんだ。夕陽ちゃん、ごめんね、言葉悪い…けど、ありのまま言わせて』
と気まずそうに表情を歪める。
夕陽は「大丈夫です」と笑った。
『その頃、あたしたち悪い事ばっかして、イライラを色んなのにぶつけてたの。もう無差別もいいとこ』
そして大きく息をつく。
『ただ…そうしないと、何かに押し潰されてしまいそうでね…。あたしが…アイツを振り回して…巻き込んだ。そしたらあんなのになっちゃった。』
「生意気っ」と遠くの大斗を指差した。
『したら突然「何かさ俺、自分がバカらしくなっちゃった。だって机投げても何にも変わんない」って言ってね。それからアイツ何を思ったか落ち着いてきちゃって、こっちは拍子抜けって感じ。大斗にとったら夕陽ちゃんがディープインパクトだったんだよね。まさかこうして会うなんてビックシ!!』
咲はビールを一気に流し込む。
『大斗はね、色々あって"愛"ってのがわかんないの。まぁ…それもあたしのせいもあるけど。出会った頃、空っぽみたいだった。喋んないし笑わないし、チビッコなのに子どもらしさ0。死んでるみたいだった』