手を繋いで遊園地に行った。
お弁当を作って動物園に行った。
一緒に歩く帰り道。
初めてキスをした日。
夏休みに入った日、初めて朝まで一緒にいた。
目覚めて隣で拓ちゃんの寝顔を見たら、心臓が10個くらい一気に動いた気がした。
爆発するかと思った。
拓ちゃんは、やっぱりあたしよりずっと大人でしっかり者。
受験生なのに合間を作って一緒に居てくれる。
あたしの全部は拓ちゃんだった。
だけど…全部が"誰か"になってしまったら…駄目な事をその時のあたしはまだ知らなかった。
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8月、いよいよ受験の取り組みが忙しくなってくる拓ちゃんはカフェのバイトを辞めた。
今までは、カフェに行けば無条件で会えたけど…。
今は勉強の邪魔をしたらいけない…
会いたい…
家に居たくないのは、今と変わらない。
いつでも拓ちゃんに会いたい。
でも…そんな事言ったら迷惑になっちゃう…
だから今日は拓ちゃんに会いに行くのは我慢する。
学校の帰り道、街中をトボトボ歩いていた。
あれ…?
あのカフェに拓ちゃんが座ってる…誰かと話してるみたい。
いつものあたしの席、外から窓に近づく…
えっ…?
女の子??
あたしは、身体が動かなくなって、その場に立ち尽くしていた。
誰?あの人…?
嫌な予感がするよ…怖い
ふっと中の拓ちゃんがあたしに気付いた。
ヤバッ!!
きびすを返して帰ろうとすると、背中に窓を叩く音がする。
恐る恐る振り返ると拓ちゃんが手招きしている。
それに引き寄せられるように、カフェに入った。
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『塾が一緒の大柳優衣(オオヤギ ユイ)さん。話してた俺の彼女』
「勉強、わからないとこ教え合ってたんだ」と拓ちゃんはあたしに大柳優衣さんを紹介した。
他の女の子と一緒は…ヤだよ…。
でも勉強だもん…邪魔は出来ない…。
優衣さんは拓ちゃんに笑顔を向ける。
あたしは何も言えなくて、下を向いてご飯を食べていた。
複雑な気持ちだった…