『そっちも似合うじゃん』
「似合うじゃん」が頭の中でエコーで響く…
『なんかテレちゃいます』
拓巳君の笑い顔が好き。
拓巳君といると、身体が暖かくなる。
心臓がドキドキする。
あたしが彼に恋に落ちるのに時間はかからなかった。
拓巳君と話す機会が増えていく。
『夕陽ちゃんは彼氏いないの?』
えぇっ?!何をいきなり聞くんですか!?
『いないです!!居たことなんてないですっ』
『そうなの?可愛いのに驚いた。』
今度は「可愛い」が頭の中で、ぐるぐるリフレイン。
『た…拓巳君は彼女いないの?』
『居ないよ。今はでも…好きな子が、いる…かな』
え…っ?「好きな子」…それが頭の中を占領した。
好きな人…いるんだ…
『夕陽ちゃんは居ないの?好きな人??』
あたし…あたしは…
『居ます…』
一言だけ絞り出した。
あたしが好きなのは拓巳君だよ…
でも…いきなり失恋…
――――
――――――
好きな人が居るのを知っても会いたい気持ちは変わらなくて、あたしは相変わらずここに来る。
でも最近拓巳君が居ない…。
何で…?
会いたいよ…
これが"切ない"って想いなのかな…?
そんなある日、いつものように私服で来てた夜10時。
食事が終わって帰る支度をしてる時にやっと彼はやって来た。
『夕陽ちゃん、今から帰るとこ?こんな時間だから送っていくよ』
えっ?
優しい笑顔で言われた。
『いいの?』
ちょっと赤くなったのバレてないかなぁ…
ドキドキ… ドキドキ…
心臓の音…バレてないかなぁ…
『テストでさぁ、バイトずっと休んでたんだ。今日終わって、今塾帰り。夕陽ちゃん居るかな?って顔出したら、やっぱりこの席にいた。』
その笑顔に…やっと会えた
あーぁ…帰り道がもっと長かったらいいのに…
もっと一緒にいたい…