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夕陽の手を引いた大斗は、泣きじゃくる彼女を「とにかく何がなんでもつかまってろ!!」とバイクに乗せていた。


背中には夕陽が泣く震えが伝わる。


大斗は全速力でスピードを上げた。

危ないのはわかっていたが、とにかく早くどこかに連れていきたかった。


ありえねぇだろ…?
偶然すぎる。


何か大斗も困惑している様子…


バイクを勢いよく停めると大斗は彼女を降ろし、また手を引いて引っ張っていく。


彼が連れてきたのは、例の海。

夕陽は変わらず泣きまくっている。



夏の残りの太陽は真上に差し掛かり、いよいよ熱く燃え上がる。

絶好の海日和も今は憎いだけだった。


ここがどこだかも分かっていないであろう夕陽は、大斗の正面に向き合うが、どこに視点があるのかも全く分からない。


ただ、泣き続けている…



あーっ!!

もうっ何だよ!!



『落ち着けっ!!』


大斗は思いっ切り夕陽を抱きしめて、


そのままの勢いで、


口づけた。



唇を塞がれた夕陽はピタッと我に還って、そのままの状態で大きく瞳を開く。


やっと唇を離した大斗は、そのままギュッと彼女を抱きしめた。



頭と腰に回された大斗の腕、体温を感じた夕陽は、「ふぇぇ-ん」と再び泣き出す。

だがさっきとは違う力の抜けた泣き方だった。



この状態でどれくらい泣いていただろうか。

相変わらず夕陽の頭の中は真っ白だった。


その間大斗は夕陽の頭をただ撫でるだけ。



ヒック ヒック …

ヒッ …


ポロポロポロポロ涙が流れる。


太陽が真上を少し過ぎた頃


『ゴメッ…』

やっと彼女は小さく口を開いて顔をあげた。


大斗は夕陽の頬の涙を拭う。


『た…たくちゃんが…いた…』


ゆっくり話し出す夕陽。


『うん。』


『教室…に拓ちゃんが、いた』



ザザーン ザザーン…


いつかと同じ波の音が響いている。



今日はそれに夕陽のすすり泣く音が重なっていた…