「…それでな、お前達にちょっとした課題を用意した。コイツを夏休み中に仕上げてこい。但し、4人全員でだぞ。」
暫く何処かへ現実逃避していた僕は、突然のクマテツの提案に現実に引き戻されみるみるうちに頬を紅潮させた。
「うへぇっ、そりゃ無理ですよ!課題発表の時でさえ全員が集まらなかったのに~。無理無理、絶対無理!」
必死に弁解云々をしようと試みるが、説得力のある言葉は全く浮かんでこない。
「そうだなぁ、試験当日にバイオリンとピアノが揃ってすっぽかしだもんなぁ。しかも後で聞いた理由が、“あー忘れてた。”だの、“行く気がしませんでした。”ときたもんだ。おかげでピアノ四重奏がお前のチェロと宇津木のビオラのデュエットになっちまった。ありゃあ、とても楽曲とは言えなかったなぁ。」
僕にとっては降ってわいた災難だった”あの事件”を思い出し、クマテツは可笑しそうに笑った。