低く、逞しい声に導かれるように、あたしは少しだけ視線を横に逸らす。


そこには、あの時と変わらない強い意志を秘めた瞳の、少年―――いや、クロスが立っていた。


足音を響かせながら、徐々にあたしに近寄ってくるクロスに、あたしは身動きすら取れない。



なんでクロスが、此処に―――?




「こうやって会うのは久しぶりだな、ミライ」



「ク、ロス…」



「その様子だと、戸惑っているようだな」




クロスの言葉は、神経を通って脳に向かう事なく、あたしの耳を通り過ぎて行く。


そして、あたしはクロスと初めて会った時の事を、鮮明に思い出していた。




―――「俺はミライと現実世界で話す事は出来ないが、こうして時々、ミライの夢の中に現われる事くらいは出来る」―――




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