あの日から俺達はかなりの有名人となった。
誉木なんかは教師にまで"摺月李"なんて呼ばれてたりする。(特に山崎)
「摺月〜」
「はいー」
「はい」
「いや、旦那のほう」
「旦那言うな」
こんな会話も何度かあった。
「あ…」
でも、誉木からの差し入れは、三年になった今も相変わらず机の中にある。
「玖瑠くん…もうすぐ卒業式だよね」
「うん」
「摺月くん進学するの?」
「んー、調理の専門学校行こうかなって思ってる。
親父の店継ぎたいし」
「…わたし、そこで働こっかな」
「ん?」
「一生」
と、誉木に間接逆プロポーズされたのは、二週間前のことだ。
「…来月だねー、卒業式」
「寂しい?」
「少し、ね」
誉木は窓の外を見つめながら言った。
「俺は、ずっと誉木のそばにいるよ」