その日から
僕の視界にはいつも誉木がいた。
授業を真面目に聞いて、ノートをちゃんととる誉木
友達と談笑する誉木
担任のつまらないギャグに笑いを堪える誉木
ときどき
僕を見つめる誉木…。
「摺月くん、あの、教科書…見せてくれますか?」
「え…」
それは、数学の授業の時間だった。
「教科書…?」
そんなもんあったっけか?
鞄の中には携帯と常葉に借りた漫画しか入ってない。
机の中は誉木からの弁当のためにあまり物をいれていない。
「……あ…あった」
奇跡だ。
机の中には、数学の教科書と
担当教師からもらった古文のノート(一ページも書かれていない)が入っていた。
「…ほい…」
「一緒に…見ない?机、くっつけよ?」
「…や、でも俺、授業聞いてねぇし…」
「……わたしが、机くっつけたいだけ…」
誉木の言葉は、俺に淡い期待を抱かせた。
「……ほまれ…」
え?