重い扉を開けると、泣きながら蹲る誉木がいた。
「……誉木…っ!」
誉木は、何も言わずに抱き着いてきた。
震えていた。
僕は、震える誉木の華奢な肩を抱きしめた。
「……怖かった…」
「…うん」
「…来てくれるって信じてた…」
「…うん」
「…山羊さんより……わたしのほうが、摺月くんのこと好きだよ…」
「……うん…っ」
守らなければいけなかった。
こうやって、ずっと
抱きしめていなくてはいけなかった。
なのに僕は、あまりにもあっさりと
誉木の手を離してしまった。
「……ごめん…ごめんな……」
謝るしか出来ない。
肝心なときに守ることが出来ず
抱きしめて、謝るしか出来ない。
僕は、何て情けないんだ…。
「……痛っ」
ふいに誉木が声をあげた。
「…あ…指」
いくつかの指の爪が割れ、至る所に切り傷ができ
制服は泥だらけ、足にも擦り傷ができていた。
「……帰ろう…」
「…うん」
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