バイトは、親父の友人の酒屋を手伝っている。
今までは夜のほうのシフトだったが、誉木と付き合い出したことで
昼の下準備に回してもらった。
「な〜リュウちゃん、夜はだめかぁ?お前がいたら女性客の入りがいんだよ〜」
猫撫で声で頼んでくる、この店のオーナー"オグさん"。
本名は小栗家燿(おぐりやひかる)
髭の似合うワイルドなおっさんだ。
常連のオカマのおねーさんたちには、最近"おぐおぐ"なんてあだ名を付けられている。
「嫌ですよ。俺、彼女大事にしたいし。
常葉がいるじゃないですか。
あいつはフリーだし、普通に夜のシフトも受けてるらしいじゃないすか」
僕は机を拭きながら答えた。
常葉というのは、僕の唯一の親友だ。
オグさんは作業する手を止めてカウンターに顎をのせていた。
「だぁってあいつ女に全く興味がないんだもんよぉ。
そのくせマリーたちの相手するから、女は俺に来るし…。
女の扱いが上手いのお前だけなんだよ〜」
マリーさんは、例のオカマのおねーさん。
俺は丁重に断って、バイトを終えた。