「ふー……」


なんとか1枚片付けて、次のに取りかかろうと、みやびは振り返った。

そして気付いた。

自分を見下ろす男の存在に。


…………。


意味もなく見つめあうふたり。

数秒の沈黙。

「まさか」

みやびの呟きによって、それは壊された。


「思い出した? ……ハ、ギ、ちゃん」


「ぎゃああぁっ!」

みるみるうちに、血の気が引いていくような感覚の中、かろうじて皿は割ることなく、みやびはその場を駆け去ったのだった。


「何で逃げるかなぁ?」

あとに残された男はひとり、ため息とともに呟く。

だけど。

その瞳は、面白い玩具を見つけた子供のように、楽しそうにきらきらしていた。